産地(山形県鶴岡市関川集落と新潟県村上市山熊田集落)に近づくにつれ、店が減り、信号が減り、民家が減っていく…。木々が生い茂る狭い道を奥へ奥へと進むと、山や川、大海原を眺めることができる秘境のような場所がそこにありました。
招かれた工房は、職人さんのご自宅のようなアットホームな雰囲気で、「キイキイ」「ダンダン」という高機(たかばた)の音を聞いていると、少し昔の時代にタイムスリップしたような気持ちになりました。
驚いたのは、仕上げまでの行程の多さと、一つひとつの作業の緻密さ。昔とほとんど変わらない道具や製法で、熟練の職人さんたちが黙々と作業を進めていた姿に、人の手でしか作ることのできない羽越しな布の魅力の秘密を見たような気がしました。
暖簾や帯、バッグ、帽子、スリッパ、お財布、カードケース、ブックカバー、しおり、アクセサリーなどの作品が並んでいました。ちなみに羽越しな布の糸の太さは産地によって違いがあり、得意な商品が異なります。
工房の奥には、乾燥させたシナノキの皮が並んでいました。ちょうど1週間前に、しな布作りの最初の工程である、シナノキの伐採と皮はぎを終えたところだそうです。
しな布のコースター織りを体験。高機を扱う動作はとてもシンプルですが、細かいところにこだわりがある、奥深い世界だということを実感しました。使用する道具や製法は、数千年前からほとんど変わっていないのだとか…