工芸品を選ぶとき、何を大事にしていますか?
大熊: 簡単に言ってしまうとシンプルなものですかね。DOで扱う商品もそうですが、やっぱり今のリアルな暮らしに落とし込めるかどうかが大事だと思っています。
ルーカス: 自分ならどう使うかイメージするのも大事。輪島塗のこの器は輪島を取材したときに買ったのですが、そもそも漆自体をよく知らなかったから、採取するところから見せてもらったんです。時代をトリップしている感覚があって、漆がいかに貴重なのかがわかりました。
これは飯碗ですが、昔の人は陶磁器ではなく漆器を使っていたそうですね。僕はこの飯碗にヨーグルトやアイスクリームを入れても楽しそうだなって思ったんです。そうやってイメージしていくのが楽しいですね。
ルーカスさん愛用の工芸品。左上から時計回りに、硬さ(鉄)と柔らかさ(花)のギャップが気に入っている、
南部鉄器・鈴木盛久工房の瓶敷。日常使いの輪島塗にこだわる塗師・赤木明登さんの飯碗。すでに4代目となる
印伝の名刺入れ。
大熊: この大きな鉢は会津本郷焼で、工芸に興味を持ち始めた頃に買いました。柳宗悦が民芸をめぐる旅をするなかで、会津で出会ったもののひとつとして紹介している記事を読んで興味を持ったんです。会津の郷土食である、にしんの山椒漬けを作るときに使う道具で、通称「にしん鉢」と呼ばれています。しかも焼き物は角があると欠けやすくなるけれども、あえてシャープな形にすることで、大事にしようとする意識が生まれるのだという話を窯元の人から聞きました。こういうストーリーに触れると、ものに対する愛着が俄然湧きますよね。僕はこれでにしんの山椒漬けを作ったことはなくて、パイプセット入れとして使っているんですけど(笑)。
大熊さん愛用の工芸品。左上から時計回りに、会津本郷焼・宗像窯のにしん鉢。カジュアルに身につけられる
“ 今っぽさ“もあわせ持つ結城紬・奥順のストール。日々のごはんがよりおいしくなる、素朴だけど力強い益子
焼・成井窯の器。
ルーカス: 使ってみて良さがわかるものもあります。取材させていただいた備前焼の作家さんからいただいた備前焼のグラスでビールを飲んだら、すごくおいしくて。この薄さをどうやって出すのか気になってきて、使わないとなかなか気づかない作り手の工夫を発見するのも面白い。
大熊: 身近な店で、日本各地の工芸に触れられる今回のようなイベントはいい機会ですよね。たとえばアパレルとかも洋服だけでなく、ライフスタイル提案を求められている時代なので、それぞれの店が自分たちのテイストに合う工芸を扱うのはとても意味のあることだと思います。
工芸品は日々の暮らしに豊かさを与えてくれると実感していますし、家で過ごす時間が大事になっている今、多くの人にその感覚を味わってほしいです。
ルーカス: 長く、毎日使えるような工芸品には、作っている人の気持ちがすごく生きていますからね。
大熊: 思いがこもっていることを使い手も感じられるから、愛着が湧く。それも工芸の魅力ですよね。