「MA by So Shi Te」産地訪問レポート
南青山のショップ「MA by So Shi Te」×「秋田杉桶樽」。このイベントに合わせて桶弁を企画しており、試作品が上がってきた様子。完成品が楽しみですね!
1.秋田杉桶樽の産地を訪ねて
日本では古くから桶と言えば木製であった。それが安価なプラスティック製などに代わり、次第に見かけなくなった木桶。でも未だに変わらず手作業で作られる木桶は、木の持つ特性を生かし、様々な場面で使い続けられている。
今回訪れたのは秋田の能代市にある清水桶屋の清水康孝さんの工房。米代川の北に広がる水田地帯の静かな集落にその工房はある。木造二階建ての工房の隣には、清水さんの家庭菜園があり、仏壇用にと栽培している花や、食卓に上がる茗荷などの野菜が植わっている。いくつかまとめて食べると美味しいよ、と渡してくれたのはブルーベリー。口に頬張ると優しいブルーベリーの味で口の中が満たされる。
生まれ育った能代を高校卒業後に出て、関西で就職した。そして東京にも数年住んで、整備士の仕事などをしたよ。過去に何度も取材を受けて、その都度繰り返してきた物語を嫌な顔一つせず優しげに語ってくれた。
カメラ目線は恥ずかしいからとうつむき加減の清水さん。
2.桶と清水さん
家業の稲作を継ぐために能代に戻った清水さんは、1984年に秋田杉桶樽が伝統的工芸品に指定されるも後継者が少ないことを知り、25、6の時に弟子入りを志願。数年修行をした後、独立。後は独学で作り続けているという。
1階の作業場は木屑とともに心地よい木の香りに満たされている。そんなことを言うと、「そう?ずっと居ると分からないなぁ」とおどけて見せる。
鉋で内側を仕上げる清水さん。作業場の壁には様々な工具が並ぶ。
脇には作業途中の桶たちが順番待ち。
桶は通常竹を編んだ箍(たが)で留められているが、現代の住空間の変化に伴い極度の乾燥のせいか度々箍が外れてしまうことがある。それならば箍を外そうと考案されたのが箍の無い桶。箍が無くなることで見た目もすっきりした美しいフォルムになり、デザインの自由度が増した。
清水さんの桶作りへの姿勢は、伝統を守りつつも新しい物を生む心。
3.桶弁登場?!
「今回の展示会ではお弁当箱を出したいんです。」
そう声を掛けると、「秋田杉のわっぱが既に完成度の高い弁当箱を出しているから今更桶の弁当箱はなぁ」などと返答があった。
「でも桶弁っていいと思うんですよね」という提案に「その桶弁って響きがいいね。それじゃ作ってみるか!」と挑戦してくださったのがこちらの試作品。通常の桶のように綺麗に鉋をかけてつるっとした木肌にするのではなく、木を割った時に自然にできる割れた荒々しい表面を生かした「へぎ目」の桶弁。
木の割れ方は割れるまで分からないのがまた楽しい。
適当に割って整えているようでも、測るとピッタリ。流石職人技。
桶弁は小さ目な二段重としても使えるし、食卓周りの小物を入れてテーブルに置いておける、そんなデザイン。お弁当箱という枠にはまり過ぎていないところが良い。展示会で正式に「桶弁(おけべん)」をご紹介させていただくので、楽しみにしていてくださいね。
4.能代という街
能代市は秋田県北西部に位置し、雄大な日本海、世界自然遺産「白神山地」、出羽丘陵の緑豊な森林地帯に囲まれています。東京からは秋田で乗り換えて東能代で更に五能線に乗り換えて片道5時間程の電車の旅。お米の産地だけあり、田んぼが広がる日本の良き田園風景を楽しめる。
一車両で走る五能線
秋田杉のわっぱでも知られるように、秋田は様々な木工芸でも有名だが秋田県北部ではじゅんさいが取れることから至る所でじゅんさいを見かける(ジュンサイの沼ではなく、販売されているところを至る所で見るという意味で)。東京で食べるじゅんさいより大きい気がする。またしょっつる(魚醤)の原料にハタハタが使われているように、ハタハタずしなどのハタハタを使った料理を美味しくいただくことができる。そのしょっつるもまた様々な商品に使われ、しょっつるのあられなどが売られていた。勿論地酒も豊富で、能代の地酒と郷土料理で職人さんとの宴は気が付けば3軒目。。。
左:ジュンサイ 右:ハタハタずし
左:秋田と言えばいぶりがっこ。手前のもち米とあえたシソの葉も美味。 中央:やっぱり地酒♪ 右:しょっつる味のあられ。醤油よりコクがあり、癖になる美味しさ。
個人的には秋田と言えばお米とわっぱ。しかしそこには新鮮な海の幸があり、山菜などの山の幸もあり、都会では味わえない郷土料理などの文化がしっかりと受け継がれていた。是非また会いに行きたいと思える素敵な出会いがそこにはあった。