伝統と進化を融合させる「小石原焼」

2021.09.30

JTCW2021参加店舗のバイヤーが、全国の産地に足を運んだ様子を紹介する
“バイヤーズレポート”。
今回は小石原焼の産地、福岡県小石原の窯元「太田哲三窯」に表参道のセレクトショップ「VA-VA CLOTHNIG&VARIETY」のスタッフが訪れました。伝統を守りながら新しい取り組みを行う小石原焼の魅力を改めて感じる訪問になりました。

小石原焼 [福岡]

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VA-VA CLOTHNIG&VARIETY [東京 青山]

窯元「太田哲三窯」を訪れていかがでしたか?

九州で最初に伝統工芸品に指定されたという小石原焼の歴史は400年以上あり、産地にはたくさんの窯元があって“器の町”といった雰囲気でした。

写真を見ると山深い里山といった感じがありますが。

そうですね…僕は熊本の出身で、ショップでは九州の器などを多く扱っていて、大分の小鹿田焼の郷の日田などに買い付けに行ったりもしているのですが、そういったところから比べると小石原はとても行きやすくて開けた場所という印象でした。ただ、茅葺き屋根の家や歴史ある建物などが多く残ってもいて、街並みに歴史を感じました。

釉薬や器の模様などが展示されている小石原伝統産業会館を訪問されたそうですね

はい。案内いただいて小石原焼の歴史などを説明していただきました。小石原焼と呼ぶ前は中野焼と呼ばれていたとか、焼く物も磁器から陶器になったり、制作物が茶道具から日用品へと変わっていった、などという小石原焼の歴史が知れてとても興味深かったです。

小石原伝統産業会館には窯もあるんですか?

ええ。窯も展示されていて、小石原焼の工程や歴史などをしっかりと知ることができます。とても充実した施設でした。僕自身学ぶことが多かったです。

翌日、太田哲三窯さんに行かれたんですね

はい。そこで窯元の太田圭さんが轆轤(ろくろ)を回しているところも見学させていただきました。

数ある小石原焼の窯元の中から太田哲三窯さんを選ばれたのはどういった理由からですか?

無形文化財に指定されている小鹿田焼などは、伝統をそのまま残すために模様や釉薬を変えたりオリジナルのものを作ってはいけないそうなのですが、無形文化財ではない小石原焼は伝統を守りつつも新たな挑戦をすることができるんです。太田哲三窯さんは青の釉薬を使った器がとても独創的で素敵だなと感じました。僕自身、昔ながらの土っぽい器が好きで、その中でも現代的にアレンジした新しい取り組みをされているのが良いなあと思ったのが理由ですね。

今回お店に並べる器はどういった視点で選ばれたのですか?

ショップは表参道という土地柄、20代後半から40代の方が多く訪れるのですが、そういった方たちのお部屋のサイズ感や生活スタイルに合わせて太田哲三窯さんと相談しながら決めていきました。二人暮らしで使うのにちょうどいい五・六・七寸あたりの器が多くなっています。

コロナ禍でおうち時間を充実させたいというニーズの高まりから去年から器の出が多くなりました。外食もままならない中で、スーパーで買ったお惣菜でも素敵な器に盛ることで気分が上がるし美味しく感じる。そういった暮らしの大切さを感じる方たちが増えているのだと思います。

そう思います。馬場さんは元々アパレルショップの店員さんだったのが飲食の仕事に転向した後に、今のお店を開かれたのですよね。

ええ。どうしてもアパレルショップとなるとお客さんに偏りが出てしまうんですよね。それで他の業種の仕事も経験してみたくなって飲食の仕事を始めたら、レストランを訪れるお客様は年齢層も性別もなんの縛りもなくて本当にいろんな人たちがきてくれるんですよね。そこに喜びを感じていた時に、もともと学生時代に衣食住に関わる仕事がしたいということも重なって、衣だけじゃない、食にも住にも関われるショップを始めたんです。

器はまさに食に欠かせない物であり、暮らしの必需品ですものね。お店で扱っている器に九州のものが多いのはご出身が熊本だからでしょうか?

ええ。自分の田舎の熊本をはじめ九州各地の素晴らしい伝統工芸品を東京に暮らす人たちにお届けできる喜びを感じています。

ふらりと店を訪れた人が「あ。これ実家で使っていた器だ」って気づいてくれたり「自分の出身地のものだけどこんな器があるって知らなかった」と言ってくれたり、お客さんと器を通してコミュニケーションできるのがとても楽しいです。「里帰りした時に産地に寄ってきました」って報告してくれる人もいるんですよ。JTCWにもう何年も参加させてもらっていますが、そうやってお店を通して全国各地の日本の素晴らしい伝統工芸品をいろいろな人たちに伝えることができることを本当に嬉しく思います。ぜひ気に入った器があったら、その産地にも足を運んでいただきたいなと思います。