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- BUYER’S REPORT THE COVER NIPPON × 江戸指物 (東京)
from Editors
六本木にある商業施設、東京ミッドタウン内に店舗を構えるTHE COVER NIPPONでは、JTCW2014の初回から参加しており、これまで井波彫刻、高山茶筌、京鹿の子絞との取り組みを披露してきました。
日本の手わざが活かされた品々を取り揃え、新しい生活を提案するライフスタイルショップとして展開しています。今回は東京の工芸品、江戸指物と取り組むにあたり、工房を4か所回って来たそうです。レポートではその模様をお伝えします。
BUYER’S REPORT
JTCWで取り組む江戸指物ですが、店舗でお客様に商品の良さや価値を伝えるには、お客様と対峙する店舗スタッフが正しく深い知識がなくてはなりません。そこで、複数日でスタッフが工房見学に行くことにしました。
工房見学は、江戸指物協同組合のご協力で1日に4件の工房を訪問しました。
まず、渡辺彰さんの工房を訪ねました。
左 渡辺彰さん/右 江戸指物でよく使われる木材
最初に、素材の勉強をさせていただきました。江戸指物でよく使われる木材には、タモ、桐、桑、黄肌などがあります。黄肌は北海道の材が約5年前から供給ストップしており、新木場でも探し出さないとないそうです。特に、大きい材はめったにないとのこと。
桑は最上級の素材といわれており、磨き上げると美しい模様が出てくるので、職人の方も扱っていてドキドキするそうです。
ここから、江戸指物の定義を解説いただいたり、技術的な説明をしてくださいました。
江戸指物の名称を使えるものは限られており、ウレタン塗装、突き板合板で作ったものは展示会には出せないそうです。ただし、ラッカー塗装は100年前からあるので江戸指物に使用してもよいそうです。このように、伝統的工芸品として認められるには様々な条件を満たす必要があります。
左 江戸指物でよく使われる木材/右 参考文献 『人倫訓蒙図案』 1690年(元禄3年)
風俗事典的絵本の一部の写真を見せてもらい、指物師という職業がいかに古くからあったかを知りました。元禄3年、1690年発刊本なので、300年以上の歴史があることになります。昔は木の板を作るのが難しく、簡単な箱物しか作れなかったのではないかと言われています。
次にお伺いしたのは、根本一徳さんの工房です。
こちらもやはり、道具に囲まれた工房スタイルとなっており、根本さんも素材のお話や道具、自身の制作する作品のお話など、多岐に渡りご説明くださいました。
左・中央 根本一徳さんの工房/右 井上喜夫さんの工房
続いて、井上喜夫さんの工房をご訪問し、制作風景を見せてもらいました。
昨今は和室が少なくなってきており、指物全体の需要も少なくなっているようです。洋室にも合うデザインや、変わったデザイン、面白いものを作り現世に残す努力をしていかねば、指物が後世まで残っていくことが出来ないと危惧されています。和洋折衷で現代の環境やライフスタイルにあわせ、使い続けてもらえる品物をどのように作ればよいか、日々研究は続きます。
最近は女性の指物師の方もいますが、大きいものを小さい手で制作するのは大変なので小物メインで作成している方が多いようです。
井上さんにも素材のお話しをお聞きしました。材木は、種類によってそれぞれの地域の物が最高に良いとのことです。
木曽は檜、会津なら桐、秋田は杉だそうです。
また、徒弟制度のお話しになり、最低賃金の問題なども鑑みるに弟子を取るのは非常に難しいそうです。後継者の問題も他の産地と同様、今後の発展を考えると取り組まねばならない課題のように感じました。
最後の訪問先は、茂上豊さんの工房です。
訪問時にちょうど、漆塗り途中の商品を見ることが出来ました。
漆を塗って乾かし、10日程かけて再度漆で着色するそうです。日本産の漆や中国産の漆が使われますが、日本産の漆は量が少なくなり高騰しているようです。それらは、日光東照宮の修繕など国宝の修繕にほとんどがまわされ、市場にはごく少量しか出回らないそうです。
指物業界では一番加工設備が揃っているそうで、色々なアイデアを形にしつつ、試行錯誤を繰り返していらっしゃいます。
茂上豊さんの工房
このように、1日で4か所もの工房を巡り、江戸指物と一口に言っても、その職人さんのカラーで作風はさまざまということがよく分かりました。
確固たる技術の上に、それぞれの個性が光る奥深い工芸品です。
JTCWでは、それぞれの個性をどれだけ伝えきれるかまさにチャレンジですが、技術力の高さと多様性を少しでも多くのお客様に見ていただきたいと思います。
また、工房を見せていただいた職人さんたち、ご協力下さった事務局の方々、ありがとうございました。
参加産地と店舗では、春から二人三脚で企画を進めており、産地への訪問もこのイベントの重要な取り組みの一つです。産地「作り手」とお客様「使い手」をつなぐ店舗の「売り手」には、とても重要な役割があります。「作り手」の制作にまつわる様々な苦労や想いを、商品を買って使ってくださるお客様に伝えられるのは「売り手」だからです。
JTCWでは、開催期間中に並ぶ商品がどのような環境で生まれ、作り続けられてきたのか。どのようにしてそれらが今回並ぶことになったかの経緯も紹介したいと考えています。
そうすることで、工芸品に接する際に少しでも身近に感じてもらい、興味を持ってもらえたら、このイベントもより楽しんで参加いただけるでしょう!
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